今こそ「哲学」を
- 山口 祐臣
- 2019年7月5日
- 読了時間: 3分
新聞紙上を頻繁に賑わしているのが不祥事。最近特に目立つように感じられますが、企業の不祥事は、今に始まったことではなく、毎年のように発生しています。 しかし、近年の特徴として事態の収拾に失敗し、さらに状況を悪化させるケースが目立っています。SNSが発達したことにより、情報の伝達速度が早く、拡散性が高いことも一因といえます。 事態の収拾にあたり、当事者および関係者からの情報の把握。そこで集めた情報を時系列を整理し真偽を確かめ、適切に取捨選択して整理を行い、可能な限りオープンに情報発信を行う。こうした丁寧かつ誠実な姿勢が求められるのですが、これらに失敗したこと、ないしは事態を軽視することから矮小化や意図的に隠蔽したケースが多々見受けられます。 適切な危機管理が行われたならば、受けるダメージを最小限に食い止め、状況が改善することも見込めたものが、判断を誤ると築いてきた信頼が損なわれ、もはや企業イメージが回復不能なところまで深刻化させてしまいます。 誰しもが正確に未来を予測する事は不可能です。しかし、過去の経験や事例からより良い選択肢を導き出す事は可能です。そのために集めた玉石混交と言える情報の真偽を見極める正しい目を持つこと。さらに、集めた情報から適切な判断を行うことが必要となります。 「哲学」「思想」これらの学問は、難解であったり時には答えすらない問いに対して思考し続け、時には過去の偉人の言葉や歴史的事象から多くの事柄を学び、答えを導き出そうと試みるものです。これらは上記の危機管理や重要な経営判断を行う過程にも通ずるものと言えるでしょう。 国は理系学科のある大学への予算を傾斜配分し、産業界が求める「即戦力」育成に力を入れています。また、経団連会長自らが「IT・外国語・数学」が出来れば良いとする発言を行い、対談相手の発した所謂教養課程を「ウンチク学問」とする発言を否定しませんでした。私が通う大学にも哲学の教授は残念ながら一人しかいません。しかし、全ての学問や技術の根底には「思考」することが不可欠です。その思考の歴史や方法を学ぶことは重要ではないでしょうか。 企業=法人は人間(自然人)ではない存在に人格を設定して権利を付与した存在です。人と同様に権利を有する存在ならば、企業が思考することは当然であり必須と言えるでしょう。 「Chief knowledge officer=CKO」最高知識責任者という職位が既にあるようですが、業務知識や企業内文化という色合いが強い職務のように感じられます。さらにもう一歩踏み込んで、「Chief Philosophy officer=CPO」最高哲学責任者ないしは最高思想責任者という職位があるべきではないでしょうか。 環境、資源、経済格差などグローバル経済下にあって地球規模での諸問題が山積する中、持続可能性という言葉がこれからの企業経営のキーワードとなります。すでにESG投資と呼ばれる「環境・社会・企業統治」の3つを重視した投資手法もスタンダードとなりつつあります。 将来の企業のあり方を思考、模索する「CPO=最高哲学責任者」という職位が、企業を将来にわたり持続させ得る重要な存在になる日が近い将来やって来るのではないか、そのように考えております。

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