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真の働き方改革とは

  • 山口 祐臣
  • 2019年5月31日
  • 読了時間: 5分

社会人となった卒業生と話をすると、「大学生のときに、もっとまじめに勉強しておけば良かった。あの講義は今の仕事に関連した重要なことを扱っていたと思うが、さっぱり覚えていない」といった声をよく聞く。 ~中略~ 特に、経済学や法学等の社会科科学系の学問は、社会の実態に接しないと実感が湧かない課題がかなりある。ほとんど社会経験のない高校を出たばかりの若者が学んでもリアリティがなく、知識を丸暗記して試験に臨みがちとなり、知識が血肉となりにくい。 ~中略~ そうであるならば、その必要性を感じたときに学んでこそ学習の成果は上がる。つまり、社会人になってから必要性を感じた時に勉強するのが、一番適切だと考えられる。そのためには、就職してからも、必要に応じて単位の修得ができるようにする等の手立てが改善策として考えられるだろう。 ~中略~ このような議論に対しては、就職してからそのように勉強をする時間がとれるのか、大学のうちにきちんと学業を習得してから就職して働くべきではないかという反論がしばしば聞かれる。 しかし、日本的雇用制度が大きな変革を迫られている中、そもそも高等教育と就職活動のあり方についても、大きな発想の転換が必要な時期にきている。その際、議論の前提とすべき基本的な構造変化は、学業を修める期間と労働に従事する期間とが明確に分かれ、勉強を終えてから、仕事をして定年を迎えるという基本サイクルがもはや通用しなくなっているという点だ。 ~中略~ 現代は、技術革新のスピードが速くなり、その一方で寿命が伸び、元気で活力を持って働ける期間は延びている。したがって、誰もが、スキルの陳腐化を防ぐために、定期的にスキルアップや能力開発をする必要性が生じてきている。卒業をしたらもう学ぶ必要がない、という時代ではないのだ。一度就職してからでも、働いて何年も経った年齢であっても、必要性を感じたときに、必要な科目を習得する。そうすることによって、より能力を生かして活躍することができる。

『大学の単位修得で提案 早期就職 働きながら学ぶ』 柳川範之 東京大学大学院経済学研究科・経済学部 日本経済新聞 5月27日より抜粋  大学の在籍期間を10年間に延長し、企業や団体に就職してからも必要に応じて断続的に大学での学びを継続する。このような野心的な提案を、東京大学の柳川教授が日経新聞に書かれていました。先日、公共経済学の先生と就職活動、従業員教育、大学における職業教育などのお話をする中でご紹介いただいた記事です。実現可能性はさておき、非常に興味深い提案です。

 社会情勢や産業構造、技術の進化などの変化するスピードが加速度を増す中、大学4年間の学びを持ってその後40年以上をビジネスの第一線で過ごすことは難しい時代となりました。

 従来は、企業側が社内外の研修参加などの機会を設けることで、新たな知識をインプットすることが出来ましたが、予算削減や利益優先のため人員配置を極限まで効率化することにより余裕が失われ、研修予算や時間が削減されている企業が多いようです。仮に各種研修などが行われていたとしても、企業内文化や業種固有の知識に基づくもので、新たな視座を得るような学びの場ではなく、いわゆる実践的な知識や技能以外の学びは社員個々人の自助努力に寄るところが大きいのが現状です。

 情報を入力し、取捨選択をし、思考する。情報を組み合わせて新たに出来上がったものや、全く別な視点から生み出されたものを出力する。それらに対しての検証を行い、次の入力をする。このサイクルを繰り返すことにより、既存のものに改良がなされ、また全く新たな創造が生み出されます。これが思考のプロセスであり、良質な思考を行うためには、大量かつ良質な情報に加え、自らの思考に対して、健全な批判や問題の提起を行う仲間が必要となります。なぜなら健全な批判は、自らが気がつかない自説の問題点や課題を浮かび上がらせ、自説をより洗練、深化させてくれる貴重なものであるからです。  同じ環境で長年過ごすことにより、人は意識しないうちに組織や集団と同質化します。似た環境下に置かれた人同士ではなく、異なる思考を持つ人との交流は新たな視座を生み出します。そのためには「似た者同士」ではなく、異なる環境、文化、言語、宗教、価値観を持つ人との交流がもっとも効果的です。つまり外的交流が人の成長をさらに促進させると言えるでしょう。 そうした学びの場に、もっともふさわしいのが学術研究の場である大学だと思います。 大学で学び、得た学びを企業や経済の最前線で実践する。そこで得た経験や課題をもって大学で再び学ぶ。学習と実践を繰り返す理想の姿ではないでしょうか。  社内文化や独自技術に精通している「スペシャリスト」であることも重要です。しかし、その知識や経験、技術が果たして最良、最善と言えるのか。自らが常識としていたものが本当に常識なのか。客観的かつ批判精神をもって慣例や常識を打ち破った先に、停滞している日本企業の真の

生産性向上がなされるのではないでしょうか。別の言い方をするならば「創造的(クリエイティブ)」な国際競争力を持つ21世紀の職業人の姿がそこにあるのではないかと思います。

 
 
 

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